160 お前さん、ほんとうにそれでいいのかい
「倒れて困っている人を見て、そのまま通り過ぎようってのかい?」
「人として情けなくねーのかよ、やんなっちゃうね、ったく。」と、寅さんなら言いそう。
作家の故司馬遼太郎氏ご自身が目の当たりにした奇妙な光景を述懐していました。
高速道路の高架下で人が横たわっている。
亡くなっているかもしれないその人の左右を自動車が走り抜けている。
ドライバーはその人に一瞬目を向けるが先へと急ぐ。
ゾーッとする光景だったと書いていました。
人が困っている時に 傍へ寄ってその人を憐れむことを「惻隠(そくいん)の情」という。
時間に追われている現代人(約20年前の著書)は惻隠の情を持つ余裕がなくなっている。
スピードや便利さが人として大切な何かを失い始めていると言います。
翻って現代は・・・、
「忙しさから惻隠の情をかけることができない」・・・、どころではありませんね。
めったに観られない珍しい光景としてわざわざ時間を費やして写真を撮る。
「気の毒な光景」が「人目を引く売れるネタ」となる。
新聞記者であった司馬遼太郎氏もここまでの堕落は想像できなかったかも知れない。
プロカメラマンは手を差し伸べれば助かったかもしれない人たちを目にすることがあります。
プロ意識と人の情けの間で葛藤し続けることもあるようです。
ときには写真の高評価とは逆に人道的見地からのパッシングに苛まれる。
一億総カメラマンの現代はそんな心を持たない人たちがドンドン出ているのが恐ろしい。
大地震のときも津波のときも日本人の秩序正しい行動が世界中から絶賛されました。
今、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。
お互いを慈しみあう情景を見ることができない彼の国。
こんなときこそ状況を見守り、静かに心落ち着けて過ごすときではないでしょうか。
手洗い、うがい、良い睡眠、栄養、運動、規則正しい日常生活をお心がけください。
日頃の免疫力強化が効力を発揮しそうです。