137 でよろしかったでしょうか
100年も続いているような美味しそうな蕎麦屋の店構え。
とても雰囲気のある重厚感を持った店の内装。
上品な器類。
陰翳礼讃とばかりな程よい照明。
心を落ち着ける柔らかで控えめな音楽。
雑誌に載っているような完璧なお店。
よくよく訊いてみるとオープンしてまだたったの1ヶ月・・・。
こういった完璧さは投資さえ惜しまなければ誰でも作れてしまうのが今の時代。
優れたデザイナーを起用すれば先月オープンのお店だって100年の老舗になってしまう。
しかし雰囲気は作っても一朝一夕に作れないものがあります。
それは「味」と「人」。
格式の高さを醸し出していくためにはそれ相当の歳月を必要とします。
このような老舗風のお店で「で、よろしかったでしょうか」は、ない。
お店を実行していく人の感性がお店をデザインした人の感性と一致していない。
レトルトフードのような味付けもいただけない。
お店とは本来オーナーの「こんな料理を作りたいっ」といった思いで創り上げていくもの。
「この場所でこんなお客様に食べてもらいたい」と生まれるべくしてその地に誕生する。
最近は発想がこれと逆になり企業のようにマーケティング先行となっているのが目に付く。
ここにこれだけこのような人が集まるからこれを提供すればこれだけ儲かる。
同じ手法でチェーン展開すれば儲けも倍増していく。
商売なので仕方ないが、店のちぐはぐさやオーナーの思い入れを感じ取れる感性を持ったお客様こそがお店の味も人も成長させていきます。
世界的建築家の安藤忠雄氏が「感性の成長は17歳まで」と言いました。
その後は絵画や音楽や映画や風景、と良いものに触れ五感を刺激して感動し、培った感性を保ち続けていく努力を怠らないように日々を過ごしていくことが大事です、と。
感性や感というのは思っている以上に老化しないものです。
毎日、たとえ些細なものでも感動し刺激と共に生きていくことが大切ですね。